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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)686号 判決 1952年3月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人嶋津美代次代理人田嶋順の上告理由は、後に添えた書面記載のとおりである。

同第一点について。

記録によれば、本件について、旧大審院が昭和一九年九月二八日神戸地方裁判所の判決を破棄し、同裁判所に差戻した判決の理由において、不動産を共有する者は、その持分の登記をしなければ、民法二五〇条の平等の推定と異なる持分の割合を第三者に対して主張することを得ないものであつて、共有者間に相異なる持分の特約があつても、その割合の登記がなく、単なる共有の登記がなされてあるに過ぎないときは、結局第三者関係に在りては、その共有者の持分割合は相均しきものとして取扱うの外なく、共有者から、その共有者の持分を均等のものとして善意で譲受けた者は、異れる割合の持分につき登記の欠缺を主張する利益を有する第三者なること疑いない趣旨を判示したので、差戻しを受けた神戸地方裁判所も、またその控訴審である大阪高等裁判所も、旧大審院の法律上の見解に従い、共有者間の異れる割合の持分につき登記がなかつたこと、及び持分の譲受人が、持分の割合が異ることにつき善意であつたことを確定した上、上告人の請求を排斥したことは明らかである。そして旧大審院でした判決は、裁判所法施行令一条により、東京高等裁判所のした判決とみなされるのであるが、上告審の判決であることに変りはないのであるから、本件において下級裁判所が、破棄の理由となつた法律上の見解に従つてした判決は、その上告審の意見が、客観的に間違つていると否とにかかわらず、これに従つた下級審の判決を違法視することはできないのである(参照、昭和二四年(れ)第二〇二九号同二五年一〇月二五日大法廷判決、集四巻一〇号二一三五頁)。従つて所論は、旧大審院の破棄の理由に反対し、独自の見解を主張することに帰し、とることを得ない。

同第二点について。

所論は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律に定める上告事由に当らない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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